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成年後見制度の診断書~入手方法から費用、頼れる医師、断られた時の対処法
成年後見制度の手続きを進める上で、多くの方がこのような疑問や不安を抱えています。特に「診断書」は、ご本人の判断能力の状態を示すために家庭裁判所へ提出が必須となる非常に重要な書類ですが、その入手方法や注意点について詳しく知る機会は少ないかもしれません。
今回のコラムのポイントは下記のとおりです。
☑診断書はご本人の判断能力を客観的に示す唯一無二の公的資料であり、後見制度申立てに不可欠。
☑診断書に記載される内容で「後見」「保佐」「補助」の支援類型が決まる。
☑診断書はかかりつけ医へ依頼。事前の準備と医師とのコミュニケーションが鍵となる。
☑医師に診断書作成を断られたら、精神科など他の医師や専門家へ相談。
☑診断書費用は健康保険適用外で全額自己負担。発行後3ヶ月の有効期限に注意。
☑2019年の様式改訂で導入された「本人情報シート」の活用により適切な判断・支援へ。
このコラムでは、成年後見制度の診断書をスムーズに入手するための具体的な手順と、適切な医師の選び方、依頼時のポイントについて解説します。
1.成年後見制度における診断書の役割とは?
成年後見制度を利用するにあたり、医師が作成する「診断書」は絶対に欠かせない書類です。では、なぜこの診断書がそれほどまでに重要視され、申立てに必須とされているのでしょうか。その役割と法的な意味について詳しく見ていきましょう。
1-1.診断書は本人の「判断能力」を証明する最重要書類
成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が十分でない方を法的に保護し、支援するための制度です。反面、成年後見制度は、ご本人の経済活動の自由や自己決定権などを制限するものでもあります。そこで、この制度を利用するためには、まずご本人が「判断能力が不十分な状態である」ことを客観的に示す必要があります。その最も重要な証拠となるのが、医師による専門的な見地から作成された診断書なのです。
診断書には、病名や現在の症状だけでなく、ご本人の判断能力がどの程度あるのか(または低下しているのか)についての医師の意見が記載されます。具体的には、「契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができるか」「支援が必要な場合、どの程度の支援が必要か」といった点が医学的に評価されます。
1-2.診断書がないと成年後見の申立てができない理由
法定後見制度を利用する際には、医師の診断書がなければ、家庭裁判所はご本人の判断能力の程度を正確に把握することができません。判断能力の確認は制度の根幹であり、この確認なしに手続きを進めることはできません。
また、診断書は、不当な申立てによって本人の権利が不必要に制限されることを防ぐ役割も担っています。医師という専門家による客観的な判断を介在させることで、制度の適正な運用が担保されるのです。そのため、成年後見制度の申立てにおいて、医師の診断書は法的に必須の書類と位置付けられています。
2.診断書の内容が決め手に!「後見」「保佐」「補助」3つの支援類型
医師が作成する診断書は、単に本人の健康状態を示すだけでなく、成年後見制度における支援の「重さ」を決定づける非常に重要な役割を担います。具体的には、本人の判断能力(専門用語で「事理弁識能力」と言います)の程度に応じて、「後見(こうけん)」「保佐(ほさ)」「補助(ほじょ)」という3つの支援類型に分けられ、それぞれ支援の内容や後見人等に与えられる権限が異なります。
2-2.本人の判断能力の程度に応じて支援内容が変わる
家庭裁判所は、診断書に記載された医師の医学的な意見を基に、これらのうちどの類型に該当するかを判断します。診断書には、医師が本人の判断能力について
☑後見相当:自己の財産を管理・処分することができない
☑保佐相当:自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要である
☑補助相当:自己の財産を管理・処分するには、援助が必要な場合がある
といった意見を記載する欄があり、これが類型判断の大きな目安となります。それぞれの類型がどのような状態に対応するのか、具体的に見ていきましょう。
①後見:判断能力を欠く常況の方
精神上の障害(認知症、知的障害、精神障害など)により、自分の行為の結果を判断できる能力(事理弁識能力)を常に欠いている状態の方です。例えば、日常的な買い物も一人では難しく、常に誰かの支援が必要な場合などが該当します。
成年後見人には、本人の財産に関する全ての法律行為について包括的な代理権が与えられます。また、本人が行った日常生活に関する行為以外の法律行為は、後から取り消すことができます。ただし、本人は判断能力がないとされるため、後見人に同意権はありません。
②保佐:判断能力が著しく不十分な方
事理弁識能力が著しく不十分な状態の方です。日常的な買い物程度は一人でできるかもしれませんが、不動産の売買や金銭の貸し借りといった重要な財産行為を自分一人で行うことは難しい場合などが該当します。
保佐人には、民法第13条第1項に定められた特定の重要な法律行為(借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、新築・増改築など)について同意権・取消権が与えられます。さらに、申立てにより特定の法律行為について代理権を与えることも可能です。
③補助:判断能力が不十分な方
理弁識能力が不十分な状態の方です。3つの類型の中では最も判断能力が残されている状態です。重要な財産行為も基本的には自分でできるかもしれませんが、一部の難しい契約や手続きについて支援があった方が良い場合などが該当します。
補助人には、申立てにより家庭裁判所が定めた特定の法律行為について同意権・取消権や代理権が与えられます。補助の開始や補助人に同意権・代理権を与える審判には、本人の同意が必要です。
2-2.診断書の医師の意見が類型判断にどう影響するのか
家庭裁判所は、提出された診断書に記載されている医師の意見を極めて重視します。医師がどの程度の判断能力低下を認めているか(例:「後見相当」など)は、申立てるべき類型や、裁判所が最終的に決定する支援の類型に大きな影響を与えます。
ただし、診断書の意見が絶対的なものではなく、家庭裁判所はその他の提出書類や調査官による調査、場合によっては鑑定手続き(より専門的な医学的判断を求める手続き)を経て、総合的に判断します。しかし、最初の入口として、診断書の内容がその後の手続きの方向性を大きく左右する点は間違いありません。
このように、診断書は成年後見制度を利用する上で、ご本人にどのような支援が必要かを判断するための最初の、そして非常に重要なステップとなるのです。
3.成年後見の診断書~入手方法とスムーズな依頼のコツ
成年後見制度の申立てに不可欠な診断書ですが、「どこで、誰に、どのように頼めばいいの?」と迷う方も少なくありません。ここでは、診断書をスムーズに取得するための具体的な方法と、依頼する際の重要なコツを分かりやすく解説します。
3-1.どこで誰に頼む?医師の選び方
診断書を作成してもらう医師に法的な制限はありませんが、最適な医師に依頼することが、より実態に即した診断書を作成してもらうための第一歩です。
①かかりつけ医(主治医)が第一候補
最も望ましいのは、日頃からご本人の健康状態や生活状況を把握している「かかりつけ医」または「主治医」に依頼することです。かかりつけ医であれば、これまでの病歴や心身の変化を理解しているため、診察内容に基づいた迅速かつ正確な診断書作成が期待できます。
普段の行動から総合的に所見を述べることができるのは主治医であり、家庭裁判所も主治医の意見を尊重する傾向があります。主治医が精神科医でなくても問題ありません。
②精神科・心療内科などの専門医も
かかりつけ医がいない場合や、かかりつけ医に診断書の作成を断られた場合、あるいは専門的な判断が難しいと判断された場合は、認知症や精神疾患に詳しい精神科、心療内科、神経内科などの専門医に相談し、作成を依頼しましょう。
③診断書を依頼する具体的な流れと準備するもの
診断書の作成をスムーズに進めるためには、事前の準備と医師への適切な情報提供が重要です。
☑医師への相談と診察の予約
診断書作成を依頼したい医師(かかりつけ医など)に、成年後見制度を利用したい旨を伝え、診断書の作成が可能か相談します。その上で、診断書作成のための診察予約を取ります。詳細な診察が必要になるため、通常の診察とは別に予約を取ることが推奨されます。
☑家庭裁判所指定の書式の準備
診断書は、家庭裁判所が定めた「成年後見用」の書式で作成してもらう必要があるので、事前に取得して診察時に持参しましょう。
☑医師へ伝えておきたい情報
診察時には、本人の日常生活の状況や、困っていることなどを具体的に医師に伝えられるように準備しておくと、より適切な診断につながります。
④「成年後見制度における診断書作成の手引」の活用
依頼する医師が成年後見用の診断書作成に不慣れな場合も想定されます。その際は、裁判所が発行している「成年後見制度における診断書作成の手引」を事前に医師に渡しておくと、スムーズな作成につながることがあります。
3-2.診断書の作成費用はいくら?
診断書の作成には費用がかかります。目安は5,000円~1万円程度となります。
医療機関によって費用は異なりますが、一般的には5,000円から1万円程度が相場とされています。中には12,000円程度かかる場合もあるようです。
診断書の作成は健康保険の適用外(自由診療)となるため、費用は全額自己負担となります。
3-3.診断書の有効期限に注意!申立て準備は計画的に
取得した診断書には有効期限があり、家庭裁判所に提出する診断書は、原則として発行日から3ヶ月以内のものとされています。期限を過ぎると再取得が必要になるため注意が必要です。
そして、診断書の作成にかかる期間も考慮しておきましょう。かかりつけ医であれば1回の診察で済むこともありますが、初めて診察を受ける医師の場合、複数回の診察が必要となり、診断書の発行までに1ヶ月程度かかることもあります。
申立て全体のスケジュールを考慮し、計画的に取得を進めましょう。
4.診断書の新様式と「本人情報シート」とは?
成年後見制度をより利用しやすく、また本人の意思を尊重した支援が行われるよう、2019年4月1日から診断書の様式が改訂され、新たに「本人情報シート」という書類が導入されました。
4-1.診断書様式の主な変更点:より本人中心の視点へ
2019年の診断書様式の改訂は、ご本人の「できること」や「意思」をより重視する方向へシフトした点が大きな特徴です。具体的には、判断能力の評価について、単純に「できる・できない」だけでなく「どのような支援があればできるか」といった視点が盛り込まれました。
(厚生労働省公式HP「01 成年後見制度における診断書の書式(運用開始)」)
4-2.「本人情報シート」の役割と作成時のポイント
このシートは、医師ではなく、日頃からご本人と接し、その生活状況やコミュニケーションの様子、大切にしていることなどをよく理解している福祉関係者(ケアマネジャー、ソーシャルワーカー、相談支援専門員、施設職員など)が作成します。
ご本人の「人となり」や「生活のリアリティ」を伝える役割を担い、以下のような場面で使用されます。
☑医師の診断の参考: 医師が医学的判断を下す際に、ご本人の具体的な生活状況を把握する助けとなる
☑家庭裁判所の判断材料: 裁判所が支援の必要性や内容、適切な後見人等を判断する上での情報の一つ
☑後見人等による支援の質の向上:選任された後見人等が、ご本人の意思や生活歴を理解し、より適切な支援を行うための基礎情報
4-3.作成時のポイントと提出の任意性
本人情報シートの作成・提出は必須ではありません。しかし、本人の状況をより深く理解し、適切な支援につなげるためには、可能な範囲で作成・提出することが推奨されます。書式や記載例は裁判所のウェブサイトから入手できます。作成を依頼する際は、福祉関係者の方に趣旨をよく説明し、協力を得ることが大切です。
(厚生労働省公式HP「01 成年後見制度における診断書の書式(運用開始)」)
5.もし医師に診断書の作成を断られたら?ケース別の対処法
成年後見制度の申立てに必須の診断書ですが、稀に医師から作成を断られてしまうケースがあります。医師が診断書の作成をためらったり、断ったりする背景には、いくつかの理由が考えられます。
制度や診断書作成への不慣れで、どのように書けばよいか分からず戸惑っているケース
ご本人の状態が専門外のため、責任を持った記載が難しいと判断するケース
一時的な診察だけでは正確に評価できないケース
診断書の内容が法的な判断に大きく関わるため慎重になっているケース
本人の状態が診断基準に達していないとの判断するケース
このようなケースに「どうすればいいの?」と途方に暮れてしまうかもしれませんが、諦める前に試せる対処法がいくつかあります。
5-1.対処法1~診断書の必要性や書式を丁寧に説明
まず試してほしいのは、医師に対して診断書の重要性や、どのような情報が必要なのかを丁寧に伝えることです。
☑裁判所の書式と手引きを提示する
☑家庭裁判所が指定する診断書の書式や、裁判所が発行している「成年後見制度における診断書作成の手引」(医師向けの説明資料)を持参し、これに基づいて作成してほしい旨を具体的に伝えましょう。どのような情報を記載すればよいかが明確になれば、医師も対応しやすくなります。
☑「本人情報シート」を併せて提供
もし可能であれば、ご本人の日常生活の状況を記載した「本人情報シート」(福祉関係者などに作成を依頼)も提示し、診断の参考にしてもらうのも有効です。
5-2.対処法2~他の医師(精神科医など)に相談
かかりつけ医に断られた、あるいは専門外と判断された場合は、精神科・心療内科・神経内科の受診を検討しましょう。 判断能力の評価は精神科医の専門分野でもあるため、これらの診療科の医師であれば、より専門的な見地から診断書を作成してもらえる可能性が高まります。
また、地域包括支援センターや市町村の高齢者福祉担当課、社会福祉協議会などに、成年後見制度に理解のある医師や医療機関について相談してみるのも一つの方法です。
5-3.対処法3~弁護士や司法書士などの専門家に相談
ご自身での対応が難しい場合や、複数の医師に断られてしまった場合は、成年後見制度に詳しい弁護士や司法書士などの専門家に相談することを検討しましょう。
専門家は、医師に対して診断書の必要性や記載方法を法的な観点から説明したり、スムーズな作成に向けて調整を行ったりすることができますし、 診断書の取得だけでなく、その後の家庭裁判所への申立て手続き全般についてサポートを受けることも可能です。
6.診断書だけでは判断困難な場合:「鑑定」とは?
成年後見制度の申立てでは、通常、医師が作成した「診断書」に基づいて本人の判断能力が評価されます。しかし、診断書の内容だけでは家庭裁判所が本人の状態を正確に把握したり、適切な支援類型(後見・保佐・補助)を判断したりするのが難しい場合があります。
そのような場合に、より専門的かつ詳細な医学的判断を求めるために行われるのが「鑑定」です。
6-1.家庭裁判所が「鑑定」を必要と判断するケース
全ての申立てで鑑定が行われるわけではありません。実際、令和3年の全国統計では鑑定が実施されたのは申立件数全体の約5.4%に留まっています。家庭裁判所が鑑定を必要と判断する主なケースとしては、以下のような状況が挙げられます。
①提出された診断書の内容が不十分な場合
・家庭裁判所指定の書式で診断書が提出されていない。
・診断書に記載されている検査結果や所見が乏しく、判断能力の程度を客観的に評価しにくい。
・診断書に記載された検査結果と、申立ての趣旨(希望する支援類型)との間に大きな食い違いがある。
②本人の状況についてより慎重な判断が必要な場合
・親族間で成年後見制度の利用や支援類型について意見が対立している。
・本人自身が成年後見制度の利用に強く反対している。
「後見」や「保佐」の申立てで、法律上は原則として鑑定が必要とされていますが、明らかに不要と認められる場合は省略されます。逆に「補助」の申立てでは原則不要ですが、必要と判断されれば実施されます。実際の運用では、類型に関わらず、裁判所が必要と認めた場合に鑑定が行われる傾向にあります。
③申立時の面談等で疑義が生じた場合
・家庭裁判所の担当者が申立人との面談や提出書類の審査を通じて、診断書の内容だけでは本人の判断能力について確信が持てないと判断した場合。
6-2.鑑定の手続きを誰が行うのか
鑑定が必要と判断されると、家庭裁判所が鑑定を行う医師(鑑定医)を選任します。鑑定医は、申立て時に提出された診断書を作成した主治医が担当することもあれば、家庭裁判所が別途指定する専門医が担当することもあります。どちらの医師に依頼するかは家庭裁判所が決定します。
鑑定医は、本人を診察し、精神状態や判断能力について専門的な見地から評価し、鑑定書を家庭裁判所に提出します。
6-3.鑑定の費用と期間の目安
鑑定には別途費用がかかり、申立人が一時的に予納金として家庭裁判所に納めるのが一般的です。
鑑定の実施は家庭裁判所の判断によるため、申立人が拒否することはできません。ただし、本人の財産が極めて少ない場合など、例外的な状況では鑑定が回避されたケースも報告されています。鑑定の可能性も念頭に置き、申立ての準備を進めることが大切です。
①費 用
一般的に5万円から10万円程度が相場とされていますが、事案や鑑定医によっては20万円程度かかることもあります。特に、診断書を作成した医師とは別の医師が鑑定を行う場合や、東京家庭裁判所管轄の場合は費用が高くなる傾向が見られます。
最終的にこの費用を申立人が負担するか、本人が負担するかは家庭裁判所が決定します。
②期 間
鑑定が行われる場合、通常の申立てよりも審理期間が長くなります。主治医が鑑定を行う場合は比較的短期間で済むこともありますが、別の医師が鑑定を行う場合は、複数回の診察が必要になるなど、1ヶ月以上の時間を要することもあります。
7.成年後見の診断書に関するよくある質問(FAQ)
成年後見制度の診断書に関して、多くの方が疑問に思われる点をQ&A形式でまとめました。
Q1.診断書はコピーでも大丈夫?
家庭裁判所に提出する診断書は、原則として原本である必要があります。医師に作成してもらった診断書の原本を提出しましょう。ただし、本人情報シートについては、医師に原本を渡して診断書の参考にしてもらい、そのコピーを申立書類と一緒に裁判所に提出することが一般的です。
Q2.診断書の内容に納得がいかない場合はどうすればいい?
診断書に記載された本人の判断能力の程度や医師の意見について、ご家族として納得がいかない場合もあるかもしれません。そのような場合は、まずは診断書を作成した医師に、なぜそのような判断になったのか理由を具体的に尋ねてみましょう。その上で、どうしても見解の相違がある場合は、別の医師にセカンドオピニオンを求めることも一つの選択肢です。
ただし、最終的にどの診断書を採用するか、あるいは鑑定を行うかどうかの判断は家庭裁判所が行います。
Q3.複数の医師から診断書をもらうことは可能?
複数の医師から診断書を取得すること自体は可能です。例えば、かかりつけの内科医と、専門である精神科医の両方から診断書をもらうケースなどが考えられます。
ただし、家庭裁判所に提出する際は、どの診断書を主要なものとして提出するか、あるいは全て提出して総合的な判断を仰ぐかなどを検討する必要があります。複数の診断書の内容が大きく異なる場合は、家庭裁判所が鑑定を要すると判断する可能性もあります。
Q4.診断書作成のために本人が診察を受ける際の注意点は?
診断書作成のための診察は、本人の判断能力を正確に評価するために重要です。
本人にことさら「しっかりするように」などとプレッシャーを与えず、普段通りの自然な状態で診察を受けられるように配慮しましょう。
医師は診察時の本人の様子だけでなく、家族から普段の生活状況や困っていることなどの情報を得ることで、より総合的な判断がしやすくなります。
本人が診察に抵抗を感じている場合は、なぜ診察が必要なのかを丁寧に説明し、不安を取り除くように努めることが大切です。
Q5.本人情報シートは誰が書くのがベスト?
本人情報シートは、本人の日常生活や社会生活の状況を客観的に把握している福祉関係者による作成が想定されています。具体的には、以下のような方が適任とされています。
・ ケアマネジャー(介護支援専門員)
・ ソーシャルワーカー(社会福祉士、精神保健福祉士など)
・ 病院や施設の相談員
・ 地域包括支援センターの職員
作成を依頼する際は、本人の状況をよく理解しており、客観的な事実に基づいて記載できる方を選ぶことが重要です。家族が記載することは想定されていません。
8.まとめ
今回のコラムでは、成年後見制度の利用に察して求められる医師の診断書について、その目的や準備の仕方、書式の改正点などについて見てきました。
本章の内容をまとめてみましょう。
☑診断書はご本人の判断能力を客観的に示す唯一無二の公的資料であり、後見制度申立てに不可欠。
☑診断書に記載される内容で「後見」「保佐」「補助」の支援類型が決まる。
☑診断書はかかりつけ医へ依頼。事前の準備と医師とのコミュニケーションが鍵となる。
☑医師に診断書作成を断られたら、精神科など他の医師や専門家へ相談。
☑診断書費用は健康保険適用外で全額自己負担。発行後3ヶ月の有効期限に注意。
☑2019年の様式改訂で導入された「本人情報シート」の活用で、より適切な判断・支援へ。
診断書は本人の判断能力の衰え度合いがどのくらいなのかを判定し、裁判所の判断を決定づける重要な資料となるものです。ちなみに「本人情報シート」は必ず作成しなければならないということはありませんので、なくても申し立て自体は可能です。
ただせっかく作られたツールですし、医師の診断を手助けする役目もあるので、可能であれば利用することをお勧めします。
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