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借地上の建物を家族信託する際は地主の承諾が必要

借地権も財産であり、当然家族信託の対象となる信託財産に含められますが、結論から言うと、地主の承諾を取る必要があります。承諾がなくても、信託契約できますが、信託契約後に想定外のトラブルが生じる可能性がでてしまうというリスクがあるのです。

【ポイント】
☑信託契約の当事者は、委託者及び受託者であるが、借地の場合は地主の承諾が必要な場合がある
☑信託契約も譲渡の一種と考え、借地権が賃借権であれば地主の承諾を求める必要がある
☑借地権譲渡の承諾料の相場は借地権価格の10%であることを頭に入れて、相談を進めていき、親の財産管理のためという理由で承諾料を求められることが想定される場合には、ほかの任意後見などの手段も検討する
☑地主の承諾を得るために時間がかかる場合には、停止条件付きの信託契約を進めていくことも一案
(項目一覧)
1.家族信託契約の当事者とその例外とは?
2.信託契約に伴う借地権譲渡承諾料を求められた場合、どの程度を想定しておくべきか
3.借地権譲渡に伴う承諾料の相場
4.地主の承諾を得るのに時間がかかることが想定される場合

1.家族信託契約の当事者とその例外とは?
信託契約は、財産管理を託す委託者と財産管理を受託する受託者間の契約で成立します。
原則、その両名のみの契約で手続きでき、たとえ受益者代理人や信託監督人、 帰属権利者として第三者を定めたとしても、これらのものは契約の当事者とはなりません。
信託法上は信託できる財産は財産的な価値があり、金銭評価できる積極財産であれば信託できます。しかし例外として考える必要があるのは、当事者間の契約だけで効力を生じさせられないのが「借地権」と「農地」です。
借地権が賃借権であれば、賃借権の譲渡は賃貸人の承諾が必要なため、賃借権(借地権)の譲渡は地主の承諾を得なければならないという制限がかかります。また、借地権が地上権であれば地上権の譲渡は自由なため、地上権(借地権)の譲渡について地主の承諾が不要です。
民法
第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は契約の解除をすることができる。

無断譲渡や転貸すると、原則として、賃貸借契約を解除されてしまうリスクがあります。
信託の対象財産が地上権(借地権)であれば地主の承諾を得なくても信託契約をすることができますが、賃借権(借地権)である場合には地主の承諾を得る必要があり、結論が異なるのです。
借地人と地主の関係が悪くなると将来、建物の建替えや信託財産としての借地権の売却などの行為をする際、以後、地主の承諾を得ることが難しくなり、融資がつかない、買い手がつかないなど、借地人にとって不利益になることが多々あるため、円満な関係を続けるためにも地主の事前の承諾を得ておく必要があります。
実務では賃借権が借地権である事例がよく見受けられます。地上権の場合には自由に譲渡ができる結果、借地人の権利が強いため、賃借権であるケースが多い状況です。
そのため、以下、借地権が賃借権であるケースを想定してその対応と対策について検討してきます。

2.信託契約に伴う借地権譲渡承諾料を求められた場合、どの程度を想定しておくべきか
この信託契約に伴う、譲渡承諾を相談者と一緒に高齢の親の財産管理のために信託したいという旨を説明し、地主側にお願いをし、その承諾を得ておく必要があります。
あくまで、お願いするポイントは、”高齢の親の財産管理のため”です。
変に、資産活用とかといった、お金に関わることには触れません。財産管理のために、手続き上、承諾が必要なためという理由一点で、実印といったことまで求めると、より慎重な判断を求めてしまうことになりかえないので、認印で承諾書をもらいます。
ですが、場合によっては、地主側から借地権の譲渡と同様に、信託契約においても借地権譲渡に伴う承諾料を求められたこともあり、信託契約をあきらめ、任意後見で対応した方がよいケースもあります。

3.借地権譲渡に伴う承諾料の相場
では、どの程度の承諾料を求められるのか、その判断のポイントは、借地借家法第19条で規定される裁判所の代諾許可の運用を基準に考えておくべきです。借地権の譲渡に伴い地主の承諾が得られない場合における救済措置として、借地権者は裁判所に対する「代諾許可」の申し立てできます。
借地借家法
(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
第十九条 借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。
2 裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。
この条文の中でも規定があるとおり、裁判上の手続きでは、財産上の給付、つまり借地権者が借地権の譲渡承諾料を地主に対して支払うことを命じられることが想定されます。
この、裁判所の承諾料の基準は、借地権価格の10%程度が相場とされています。
借地権を対象とする信託契約の譲渡承諾依頼をする際、地主側から上記の承諾料を目安に、場合によっては借地権価格の10%の承諾料を求められる可能性があるということを頭に入れながら、地主と相談を進めてみてください。

4.地主の承諾を得るのに時間がかかることが想定される場合
地主側の承諾を得るために、時間がかかることが想定される場合で、その後の売却や処分、有効活用など積極的な財産管理していく必要があるケースにおいては、本人の財産の保護中心である任意後見契約ではなく、信託契約で対応しなければならないこともあります。
その場合には、信託契約について、賃貸人である地主の承諾が得られることを停止条件とする「借地権信託契約」とするといった対応し、地主の承諾が得られたときに信託契約の効力を生じさせるといった対応も一案です。
停止条件付信託契約としておくことで、借地権の無断譲渡による土地賃貸借契約の解除されるリスクを防ぐとともに、地主の承諾により効力を将来確定的に信託契約の効力を発生させる、場合によっては、裁判所に代諾許可の申立て(信託契約の受託者が確定していなければ、代諾許可の申立てはできないので停止条件付信託契約することで申立てができる)という選択肢をつくることもできます。

委託者兼受益者を想定する信託契約は、あくまで本人が財産的な権利を持っているため厳密な譲渡というわけではありません。ですが、借地権の信託に伴い、地主の承諾を得ずに無断で進めた結果、後日、信託財産である借地権を売却したい、といったときに今回説明したような借地権の売却(譲渡)の承諾を得られないといった問題が発生する可能性もあるため、原則として、地主の協力を得て進めることが重要という認識の上、設計を進めてみてください。

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