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家族信託と生前贈与、任意後見の違いと注意点
家族信託と生前贈与、任意後見それぞれの違いと注意点を以下の通り、解説します。
❶各制度と対比して考える家族信託の良いところ
前回の記事で説明してきた対策と比較しながら、家族信託で何ができるのか、そのメリットをお伝えしていきます。
【VS生前贈与】お母さまの実家の名義は完全にはなくならい
名実ともに、実家の所有権がご長男に移転してしまう生前贈与に比べ、家族信託では、表向きの「名」はご長男(受託者)にうつりますが、「実」はお母さまに残ります。
信託契約において、目的を「お母さまが心身共に安心して健やかに過ごせる環境を整えること」と設定すれば、ご長男の権限は、本目的内に限定されます。そのため、ご長男は、「お母さまが元気なのに、自分勝手な理由で実家を売却する」という様な暴挙はできなくなります。万が一、ご長男が暴走した場合は、お母さまは単独でご長男を受託者から解任することも可能です。
また、ご長女をご長男が暴走しない様に監視する役目(受益者代理人や信託監督人)として設定することもできます。
このように、家族信託では、お母さまが「失敗だった!」と思ったら、いつでも引き返す道が残っているため、お母さまの不安を和らげることができる制度となっています。
【VS生前贈与】贈与税・不動産取得税は発生しない
家族信託の場合は、実家の実質的な名義はお母さまに残るため、信託契約締結時には、贈与税・不動産取得税は発生しません。お母さまがお亡くなりになったタイミングで相続税が発生します。
【VS成年後見】第三者の干渉を受けることなく、家族の中だけで完結できる
成年後見と比べて、家族信託は、第三者が干渉することはありません。家族の判断だけで実家売却の判断ができます。
❷家族信託で押さえておくべき注意点
家族信託でも、良いところがある反面、下記に注意する必要があります。
【注意点1】受託者(ご長男)に相応の責任が課される
他人(お母さま)の財産を管理する以上、受託者(ご長男)には相応の責任が課されます。最も重大な責任は、信託財産の事故等により第三者に損害を与えた場合は、受託者の個人財産で損害を賠償する可能性があるということです。
今回の案件の場合、例えば、台風等で吹き飛ばされた実家の雨戸によって、隣の家の門が壊れてしまった場合、信託財産内の財産では賠償しきれなかった場合は、ご長男の個人財産からお隣さんへの損害賠償金を支払うこととなります。
【注意点2】初期費用が発生する
家族信託において、法定・任意後見の様な月額費用は発生しません。しかし、最初に信託契約の組成を専門家に依頼する場合、おおむね信託財産額の1.5%(約30万円~)の費用が発生します。
(一般的には、法定後見における成年後見人に対しては、約30万円/年程度、任意後見における任意監督人に対しては約15万円/年程度の報酬が発生します。報酬は、財産額によって変更するため、詳細は、家庭裁判所のHPをご参照ください)
❸認知症でも契約ができるかの判断基準は「契約内容を理解できるかどうか」
ここまで認知症になる「前」と「後」の対策について説明してきました。認知症になる「前」の各種対策では、契約当事者である親が正常な判断能力をもっていないと成立しません。
それでは、どのような状態であれば、お母さまは「正常な判断能力をもっている」と言えるのでしょうか?
例えば「要介護度」と判断能力は直接にはリンクしません。身体的な介護が必要だったとしても、契約内容をきちんと理解できるのであれば、契約を結ぶことができるからです。同じように、「施設入所中」「入院中」という事実だけで、「判断能力」があるかどうかは判断できません。
契約時に求められる理解力というのは、大まかには下記の通りです。
☑氏名/生年月日/住所が言えること
☑契約書に署名ができること(身体的に難しい場合は除く)
☑その契約の大まかな仕組み、メリット/デメリットが分かること
(どの財産を誰に託そうとしているのかが理解できていること)
公正証書で契約書を作成する場合、契約能力があるかは最終的には「公証人」が判断します。当事務所では、お母さまの状態をヒアリングして、認知症の恐れがある場合は、事前に面談等を行い、様子を確認しております。
❹まとめ
将来の実家を売却するかもしれない場合に備えて、親が完全に認知症になる前であれば、選べる対策についてご紹介してきました。
☑認知症になったら、預貯金口座は凍結され、本人名義による不動産の売却はできなくなる。
☑認知症になったら、不動産を売買するためには「成年後見制度」を利用する必要がある。
☑認知症になる前なら選べる3つの生前対策(生前贈与・任意後見・家族信託)がある
☑諦める前にもう一度確認!契約締結に必要な判断能力の目安は、「契約内容を理解できるかどうか」
それぞれの対策にはメリット・デメリットがあり、どの対策を選ぶかは、家族の状況によって変わってきます。また、「認知症対策(実家売却)」だけはなく、「資産承継対策」も目的とした場合は、遺言等も視野に入れる必要があるでしょう。
いろいろと比較した上で、「何もしない」というのも選択肢もあるかもしれません。ご家族について最適な選択をするためには、なるべく中立的な立場の専門家にご相談することをお勧めします。
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