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予約型代理人その2~成年後見制度・家族信託との比較

1.成年後見制度との比較
予約型代理人サービス(銀行の事前代理人制度)は、成年後見制度に比べて手軽に利用できるメリットがあります。
しかし両者の違いを正しく理解し、それぞれ「何ができて何ができないか」を把握しておくことが大切です。必要に応じて両制度を使い分けられるよう、以下に主要なポイントを整理して解説します(法定後見を念頭に置き、必要に応じて任意後見契約とも比較します)。
1-1. 手続き・開始までの違い
①予約型代理人サービスの場合: 本人が元気なうちに銀行で代理人予約の申込を行い、事前に代理人との契約関係を結んでおきます。将来、本人の判断能力が低下した際には、銀行所定の医師の診断書を提出することで代理権が発動します。
家庭裁判所の審判などの手続きは不要で、開始までの期間も短く、診断書提出から代理開始まで数日~1週間程度で済みます。
②成年後見制度(法定後見)の場合: 本人の判断能力が低下した後、親族等が家庭裁判所へ後見開始の申立てを行い、調査・審問を経て裁判所が後見人を選任します。申立てから審判確定までは一般的に数か月程度かかります。
なお、任意後見契約という方法では本人が元気なうちに公正証書で後見人候補と契約を結べますが、実際に契約内容を発動する際には家庭裁判所で後見監督人を選任し契約内容の確認を受ける必要があるため、結局のところ完全に利用できるようになるまで時間と手間がかかる点は共通しています。
2-2. 代理人(後見人)の選び方の違い
①予約型代理人サービスの場合: 本人が自分で代理人を指名できます。
原則として二親等内の親族(配偶者・子・兄弟姉妹・孫・祖父母など)から選ぶ必要があり、信頼できる家族に任せられる点で安心感があります。
ただし、銀行の判断によっては、指定した代理人では申込を受け付けてもらえない場合もあるようです(例えば不正の恐れがあるケースなど、銀行側で不適格と判断される場合)。
②成年後見制度(法定後見)の場合: 家庭裁判所が後見人を選任します。
親族が後見人に選ばれるケースもありますが、裁判所の判断で司法書士や弁護士などの専門職の第三者が選ばれることもあります。特に本人の資産規模が大きい場合や親族間で利害対立・争いがある場合には、親族以外の専門職後見人が付く傾向があります。
また、任意後見契約の場合、本人が後見人候補者を自由に指名できますが、最終的な任意後見監督人は裁判所が指名してチェックする仕組みです。
いずれにせよ「誰が財産を管理するか」という点で、予約型代理人は家族主体で決められるのに対し、成年後見では第三者が関与してくる可能性があるという違いがあります。
1-3. 権限の範囲の違い
この点が両者の最大の相違点です。
①予約型代理人サービスの場合: 代理人に与えられる権限は文字通り「登録した銀行口座の取引」に限定されます。例えば三菱UFJ銀行でこのサービスを利用した場合、その銀行内の預金や有価証券の管理(払い戻し・解約・振替など)のみ代理人が行えます。
他方、それ以外の財産には一切関与できません。他の銀行の口座や自宅の現金、有価証券、本人名義の不動産の処分などについては代理権がなく、一切手を出せない仕組みです。
②成年後見制度(法定後見)の場合: 後見人の権限は法律上非常に広範囲で、本人の財産管理全般を代理できます。預貯金の管理・解約はもちろん、不動産を売却して介護費用に充てることや生命保険の解約なども後見人の職務に含まれます。
一部、身上監護的な行為(介護サービス契約の締結や施設入所の手続き等)も法定後見人の権限に含まれ、本人の日常生活に関わる契約を代理することも可能です。ただし、後見人が居住用不動産売却など重要な行為を行う際には家庭裁判所の許可が必要です。
1-4. 費用の違い
①予約型代理人サービスの場合: 基本的に費用負担なく利用できます(医師の診断書作成料程度を除く)。
銀行での申し込み手数料や代理人カード発行料などは、現時点では設定されていないのが通常です。銀行によっては将来的に手数料が導入される可能性もありますが、少なくとも現状は無料で利用できるケースがほとんどです。
②成年後見制度の場合: 法定後見の申立て時には、収入印紙代・郵便切手代など数千円~1万円程度の実費がかかります。場合によっては鑑定費用(数万円)が発生することもあります。
さらに後見が開始すると、選ばれた後見人(専門職が就任した場合)や任意後見契約で選任される後見監督人への報酬が毎年発生します。報酬額は本人の資産や収支状況にもよりますが、一般的なケースで年間20~60万円程度とされ、これが本人の財産から継続的に支払われます。経済的負担という面では無視できない大きなコストです。
また、任意後見契約を公正証書で結ぶ際には、公証役場での手数料(約1~2万円)も必要になります。このように経済的コストの面では、予約型代理人サービスが圧倒的に有利と言えるでしょう。
1-5. 外部の監督体制と安心感の違い
①予約型代理人サービスの場合: 銀行のサービスであり、家庭裁判所など第三者の継続的な監督は一切ありません。代理人の行為は基本的に誰からもチェックされないため、良くも悪くも家族の裁量に委ねられる仕組みです。不正の恐れが全くのゼロとは言えないものの、その反面、裁判所への定期報告義務などがないため事務的負担がなく、柔軟かつ迅速に資金を動かせる利点もあります。
②成年後見制度の場合: 法定後見では家庭裁判所が常に後見人の業務を監督します。
少なくとも年1回は後見人に対して収支報告書類の提出が課され、不審な点があれば家庭裁判所が調査や場合によっては後見人の解任を行います。
任意後見の場合も後見監督人(弁護士等)が就任してチェックする体制になっています。このように第三者の目によるガバナンス(統制)が利いている点は安心材料ですが、その分、家族にとっても事務処理の手間がかかるデメリットがあります。
また後見人は家庭裁判所の許可なしに勝手なことはできないため、緊急時の迅速な対応という点では機動力が劣る場面もあります。つまり「手軽さ」と「安心感」のトレードオフ(どちらかを取れば一方が犠牲になる関係)が両制度にはあると言えるでしょう。
1-7.総括
以上のように、予約型代理人サービスは銀行口座の管理に特化した簡易な仕組みであり、成年後見制度は本人の財産全般を保護する包括的な制度です。それぞれに長所と短所があるため、ケースに応じて使い分けることが重要です。
例えば「預貯金の管理だけを家族に任せたい」「できるだけ裁判所の世話になりたくない」という場合には、予約型代理人サービスが有効でしょう。一方、不動産を売却して介護費用に充てる必要がある場合や、身寄りがなく専門職に財産管理を依頼したい場合などには、成年後見制度(法定後見)の利用を検討すべきです。
また、すでに認知症が進行しているケースでは予約型代理人サービスの新規登録はできません。その場合は迷わず成年後見制度など別の手段に切り替える必要があります。
いずれの制度を利用するにせよ、本人や家族の状況・希望に合わせて最適な方法を選択することが大切です。両者の違いを正しく理解した上で、早めに備えを検討しておくと安心でしょう。

2.家族信託との違い
では次に、近年注目されている家族信託(民事信託)と予約型代理人の違いを見てみましょう。
家族信託とは、本人(委託者)の財産を信頼できる家族(受託者)に託し、管理・運用や将来の承継方法まで柔軟に定めておく制度です。認知症対策としては、財産を元気なうちに信託に移しておくことで、後に本人が判断能力を失っても受託者である家族が財産を凍結なく管理し続けられるという利点があります。一見すると予約型代理人と目的が似ていますが、仕組みや効果が大きく異なるため注意が必要です。
2-1. 手続き・開始までの違い
①予約型代理人サービスの場合: 本人が元気なうちに銀行で代理人予約の申込を行い、事前に代理人との契約関係を結んでおきます。将来、本人の判断能力が低下した際には、銀行所定の医師の診断書を提出することで代理権が発動します。家庭裁判所の審判などの手続きは不要で、開始までの期間も短く、診断書提出から代理開始まで数日~1週間程度で済みます。
②家族信託の場合: 通常、公証役場で公正証書による信託契約書を作成し、信託する財産(不動産なら登記、銀行預金なら信託口口座の開設など)を受託者名義へ移す必要があります。専門家への依頼費用や登記費用など、初期コストも発生します。
2-2. 管理できる財産の違い
①予約型代理人サービスの場合: 対象は登録した銀行口座の預貯金等に限定されます。その他の資産(他行口座、不動産、株式など)には一切関与できません。
②家族信託の場合: 現預金、不動産、有価証券など、契約で定めたさまざまな資産を一括で信託財産として管理することが可能です。
2-3. 効力の発動・運用の違い
①予約型代理人サービスの場合: 判断能力が低下したことを医師の診断書で証明し、初めて代理権が発動します。それまでは本人が口座を自由に管理します。
②家族信託の場合: 契約締結と同時に信託の効力が発生し、以後は受託者が財産を管理します。本人の判断能力の有無にかかわらず、受託者が契約に基づいて運用できます。
2-4. 費用の違い
①予約型代理人サービスの場合: 基本的に無料で利用できます。かかる費用は診断書の取得費用程度です。
②家族信託の場合: 公証役場の手数料、専門家報酬、不動産の登記費用など、数十万円単位の初期費用が発生します。
2-5. 本人死亡時の取り扱い
①予約型代理人サービスの場合: 本人が亡くなると代理権は消滅し、口座は凍結されます。その後は通常の相続手続きに移行します。
②家族信託の場合: 信託契約で本人死亡後の財産承継先を指定することができるため、遺言書と同様の機能を果たします。
2-6. 管理主体と監督体制の違い
①予約型代理人サービスの場合: 銀行への届出に基づく私的な仕組みであり、裁判所など外部の監督機関はありません。代理人の管理行為は基本的に家族内で完結します。
②家族信託の場合: 信託監督人や受益者代理人など、契約によって一定の監視体制を設けることはできますが、基本的に裁判所の関与はありません。受託者には法的な忠実義務や善管注意義務が課されており、不正があれば損害賠償請求等で追及されることもありますが、日常的なチェック機能はありません。
2-7.総括
予約型代理人サービスと家族信託は、いずれも認知症による財産凍結を防ぐための有効な制度ですが、その仕組みや対象範囲には明確な違いがあります。手軽さと導入コストの低さを重視するなら予約型代理人サービスが適しています。一方、不動産や複数の資産を包括的に管理し、死亡後の承継計画まで含めて設計したい場合には、家族信託が効果的です。
たとえば、自宅不動産も含めて将来の相続まで見据えた対策をしたいのであれば、家族信託を活用することで、預金だけでなく不動産も凍結を防ぎ、資産承継の意思を契約で明確にしておくことができます。
その反面、家族信託は設計や手続きに時間と費用がかかるため、動かす財産が自宅と数百万円程度の預金であれば、予約型代理人サービスに加えて、他行口座を整理したり、遺言書を用意したりすることで、現実的かつ十分な対策となるケースも少なくありません。
大切なのは、ご家族の状況や財産の内容を踏まえて、目的に応じた制度を柔軟に組み合わせていくことです。一つの方法に固執せず、信頼できる専門家と相談しながら、最適な形で将来への備えを進めることをおすすめします。
3.まとめ
「予約型代理人」サービスは、認知症による預金口座の凍結に備えるための、画期的かつ手軽な制度です。家庭裁判所を介さず、家族だけで完結できるという点は、実務を担う司法書士の視点から見ても非常に実用的であり、今後ますます活用が広がっていくことが期待されます。
特に、成年後見制度には抵抗があるものの、「何も対策しないのは不安」というご家庭にとっては、有力な選択肢となるはずです。
ただし、予約型代理人サービスだけですべてをカバーできるわけではないことにも注意が必要です。たとえば、銀行口座以外の財産(不動産・他行預金・証券口座など)の管理や、介護施設の入所契約などの療養看護の支援には対応していません。また、すべての銀行でこのサービスが導入されているわけではないため、対象金融機関の確認も必須です。
また、この制度の大きな前提として「本人の判断能力があるうちにしか利用できない」という点があります。認知症が進行し、意思能力が不十分になってからでは、制度の利用はできません。「そのうちに」と先送りにしてしまうと、制度が使えないまま判断能力が低下してしまう恐れもあります。
だからこそ、今このタイミングで備えを検討することが何よりも重要です。まずは、ご自身やご両親の預金口座の管理状況を確認し、現在利用している銀行で予約型代理人サービスが利用可能かをチェックしてみてください。

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